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大沼ヒロシ

Author:大沼ヒロシ
大沼ヒロシと申します。ブログはじめたての初心者です。どうぞよろしく。

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「さよならひとりぼっち」の巻
 マルぼんが散歩から帰ると、部屋でヒロシがラムネを食うかのように睡眠薬にパクついていたので、ビンタして阻止し、理由を聞いてみると、例のごとく仲間うちでの揉め事の様子。


 今日は、みんなで集まって互いのコレクションを紹介しあったそうなんですけど、金歯には「世界の猟奇殺人犯の私物」、ナウマン象には「ベトナム戦争で散っていた戦友たちの形見」、ルナちゃんには「ギュルペペ神サマ(妄想上の神)から戴いた、人類救済グッズ」、大脳には「春画」という素晴らしい(一部除く)コレクションがあるのに、ヒロシには誇れるものはなにもない。


 ヒロシはそれがたまらなく嫌なんだそうです。


 マルぼんは「素晴らしいコレクションがすぐに集まる機密道具だして~」とか泣きつかれると思っていたんですが、ヒロシは意外にもそこらへんのことは自分で解決していました。


ヒロシ「すぐに集まって価値のある物はないかと探してみたら、なんのことはない、すぐ近くあったんだ。持ち主の人に交渉してみたら、快く譲ってもらえたんだけど……ちょっと後悔していてさ」


 ようするに、その譲ってもらった物を処分したいようです。


 そんなこと、機密道具の力を持ってすれば造作もないことだとマルぼんは思ったので、処分を快く引き受けてやることにしました。


 譲ってもらった物はあとから送ってもらうことになっているらしいので、マルぼんは待つ事に。


 数時間後、家の前にトラックが停止。運転手がヒロシに手を振っています。トラックの荷台には、たくさんのお年寄りが。


ヒロシ「もうすぐ潰れる老人ホームの入居者の皆さん。引き取り手がいないらしいから……なんだよ、その顔! コレクションになると思ったんだよ! だってさ、価値あるだろ? 命って」


 トラックは一台ではなく、最終的に計五台ほどやってきて、家はあっというまにお年よりで溢れかえり、天国(or地獄)に一番近い場所と化してしまいました。


ヒロシ「さぁ、マルぼん! ご自慢の機密道具とやらでさっさと処分しろよ!」


 なかば逆切れ状態でマルぼんに叫ぶヒロシ。


 このままではどうしようもないと思ったマルぼんもゴミ処分用機密道具を取り出しました。


 この機密道具は、どういう性能かはさっぱりわからないんですが、出し入れ口から中に放り込んだものは放射性廃棄物であろうが硫酸ピッチであろうがなにを捨てても法に触れないという優れものです。


「仕方ないと」自分に言い聞かせながら、マルぼんは近くにいたおばあさんの手を取りました。


おばあさん「キヨヒコ?」


 おばあさんは、マルぼんを聞いたことのない名前で呼んだんです。


おばあさん「キヨヒコ! キヨヒコ!」


 マルぼんがうろたえていると、側にいたおじいさんがマルぼんに話しかけてきました。


おじいさん「あんたは、このばあさんの死んだ息子(キヨヒコ)にそっくりなんだ」


 その話を聞いて、マルぼんは脳天を鈍器のようなもので執拗に殴打されたかのようなショックをうけました。


 マルぼんはできません。この人たちを処分することなんて、できやしません。


ヒロシ「マルぼんはやさしいんだね」


 うな垂れているマルぼんをヒロシがなぐさめてくれました。


ヒロシ「こんな荒廃した時代だしね。そのやさしさ、大切にしなよ」


マルぼん「ヒ、ヒロシ……」


ヒロシ「でも、でもね、マルぼん。やさしさだけじゃ生きてはいけないんだ」


 そう言うとヒロシ、おばあさんの腕を掴んで


ヒロシ「やさしさにサヨナラすることも大事なんだー!」


 機密道具の中に放り込もうとしました。


おばあさん「キヨヒコ、助けてー! キーヨーヒーコー!」


マルぼん「ああっだめぇぇぇぇぇ! おばーちゃーん!」


 泣き叫ぶおばあさん。そんなおばあさんを容赦なく処分しようとする、弱者には徹底的に強いヒロシ。そんなヒロシにすがりつくマルぼん。そんな3人と関係なく「飯はまだかい?」「軍曹どの!」「エヘ、エヘへ」と騒ぎ立てるお年寄りたち。


 飛び交う怒号と体液で、部屋は地獄のようになってしまいました。しばらくその状態が続き、


男「てめえら静かにしねえとぶち殺すぞぉ!」


 今度は、出刃包丁を手にした男が乱入してきたんです。出刃包丁を持って「電波を流すのはやめろ」と怒鳴り込んできたのはよく見ると、ヒロシ宅の隣に住む、早稲田天才丸さんでした。


 天才丸さんはその名の通り、幼い頃から「よっ! 天才!」「町内期待の星」「この、薄汚いミュータント野郎!(頭が良すぎるから)」と近隣の人たちから親しまれており、現在はその天才能力を存分に活かせる大学に入るべく、勉強勉強また勉強の毎日を送っておられます。(今年の春、めでたく浪人生活15周年突破)


 隣人が浪人生ということも忘れ、本能のままに暴れ狂っていたマルぼんたちは、己のケダモノのような所存を詫び、天才丸さんに事情を話してみました。


天才丸「ようするに、この生きることを望まれない方々をなんとかしたいワケだな。それならいい案がある。こいつを見てみろ」


 そういうと天才丸さんは懐から、アニメ絵の半裸の女の子に人形を取り出しました、異様に精密に作られている、なかなかの逸品です。


天才丸「こいつはな、チョコ菓子のオマケなんだ。よくできてるだろ? これのおかげで、そのチョコ菓子はバカ売れしているんだ。……意味はわかるよな?」


 どうやら「お年よりたちをお菓子のオマケにして売りさばく」という作戦のようです。


天才丸「バカ。こんな余命幾ばくもない年より、普通に売れるわけないだろ。……そこで、だ。マルぼん。オマエ、不思議な道具を持っているんだってな。こんな道具はないか? ゴニョゴニョ……」


 マルぼんに耳打ちしてくる天才丸さん。天才丸さんの言ったような機密道具はたしかにありました。


天才丸「ふふふ。その機密道具をな、この年よりたちに使うんだよ」


 確かに、その機密道具を天才丸さんの言うような使い方をすれば、お年よりたちは簡単に売りさばくことができます。


 マルぼんは、そんなことを思いつく天才丸さんに心底感心して「さすが! 15年も浪人する根性と、親への負担を考えない度胸の持ち主!」と賞賛の言葉を送りました。


 それに呼応してヒロシが、そして100%事態を把握していないお年よりたちが、天才丸さんに惜しみない拍手を送ったのでした。


天才丸「俺を誰だと思っている? 早稲田天才丸サマだぜ? 伊達に高校の時にクラスの女子たち(ほとんどが現在人妻)から『なんか臭いから近づくな!』『天才丸くんと同じ班になりたくない』と恐れられてはいない!」


 マルぼんには、そんな天才丸さんがとても頼もしく見えました。


 天才丸さんに言われてマルぼんが持ってきた機密道具は「モノノカ値抗生物質」という、名前どおり「物の価値」を無理矢理に変化させてしまう薬でした。


 みらいのせかいでは、原野商法や浄水器販売のサポートアイテムとして使われる他、そこらへんに転がっている石ころに使用して「金以上の価値!」と身寄りのないおじいさんおばあさんに売りつけたり、一家心中で空家になった家に使用してなにも知らない人に「いい物件ですよ?」としれっと売りつけたり、捕らえた共産ゲリラの脳に大量投与して「オマエの信じていた思想って、こんなちっぽけなんですけど。君の人生ってなんだったのかにゃ?」とちょっと強引な思想教育に使用してみたりと、幅広い用途のある道具です。


 この薬をお年よりに使って価値を上げ、売りさばいてしまおうというのが天才丸さんの作戦なのです。


 マルぼんはこの薬が人間に効果があるのか試すべく、近くにいたおばあさんに投与してみました。


天才丸「なあ、マルぼん。このばあさん、本当に売りさばいちゃうのか?」


 薬を使った途端、天才丸さんの言動が変化。


天才丸「やっぱり……売るんだな! 認めない! そんなこと、俺は認めないぞう! たとえ神でも二人の仲を引き裂く事はできないんだ!」


 天才丸さんは、持ってきた包丁を拾うと、おばあさんの手を取って外へと飛び出していきました。


天才丸「行こう! 俺と君だけの、苦しみも悲しみもない幸せだけが半永久的に続く国へ!」


 二人手に手をとって、本当に楽しそうに駆けていく天才丸さんの姿を見て「モノノカ値抗生物質」の人間への効力を確信したのでした。
 天才丸さんが「苦しみも悲しみもない幸せだけが半永久的に続く国」から帰ってこないので、マルぼんとヒロシは2人でお年よりたちに「モノノカ値抗生物質」を投与しました。


 途中、「モノノカ値抗生物質」の影響で、何度もお年よりを抱きしめたり頬擦りしたりその膝で思わず泣いてみたり
しそうになりましたが、その都度、太ももに鋏をつきたてたり手首を切ったりして、マルぼんたちは耐え抜き、なんと全員への投与を完了させました。


 そしてそのままの勢いで全員を梱包して、家の前にディスプレイし「チョコエッグ~日本の老人シリーズ~」として売り出したのです。


 チョコ菓子とセットにし、お年よりたりをお菓子のオマケのしたのは、人身売買での摘発を避けるための作戦だったりします。


 天才丸さんの話によると「国有地であろうが臓器であろうが、お菓子のオマケとして売り出せば、どんなものでも罰せられない」という法律があるそうのなので、それを受けての作戦なのです。


「モノノカ値抗生物質」のおかげで「チョコエッグ~日本の老人シリーズ~」は一瞬で売り切れ、なんとか今回の事件は片がつきました。


 そしてマルぼんたちの手許には「チョコエッグ~日本の老人シリーズ~」の売上金、30数万円が残ったのです。


天才丸「その金をもっと増やす気はねえか? 儲ける気はねえか?」


 いつのまにか、天才丸さんがマルぼんの近くに立っていました。


 さらに儲けるといっても、新しい売り物になるようなお年よりはもう誰もいません。


天才丸「別にだな、売り物は年よりじゃなくてもいいんだ。これをみろよ。探せば、この町にも色々あるもんだぜ」


 そう言って天才丸さんが手渡してきたのは、色々なところが赤いペンでチェックを入れられているこの町の地図でした。


 チェックを入れられているところは


ヒロシ「刑務所! こっちは入局管理局の収容所! 少年院もある!」 
 新シリーズ「チョコエッグ~日本への密入国者シリーズ~」や「チョコエッグ~日本の犯罪者シリーズ~」「チョコエッグ~日本の死刑囚シリーズ~」は「モノノカ値抗生物質」の力で売れました。バカみたいに売れました。


 素敵なオマケをもらって消費者はニッコリ。


 自由をもらって犯罪者たちもニッコリ。


 祖国の家族への仕送りを稼ぐための職場がみつかって密入国のみなさんも二ッコリ(「チョコエッグ~日本への密入国者シリーズ~」は中小企業の社長サン限定商品)


 懐がホクホクでマルぼんたちもニッコリ。


 刑務所などから受刑者をゲットするのにいくつか機密道具を使ったんですが、その費用を差し引いても儲けはすごい額です。


 まさに「みんなが幸せになる」というねずみ講も真っ青な商売です。


天才丸「商売は秘訣は、間髪入れずに新商品を発売することだっ! 次のシリーズは、これっ!」


 そういって、天才丸さんがマルぼんとヒロシに手渡してきたのは、またも至るところにチェックの入れられた町内の地図でした。


ヒロシ「これ……僕の学校の、生徒の下校ルートだ……」


 天才丸さんはチェックを入れた小学生の下校ルートを車でウロウロし、女子小学生に声をかけているところを巡回中の警官に発見され、逮捕されました。


 事件を報道していたニュースで天才丸さんは「ネット上で被害者を中傷する発言」だとか「実は蛇頭の幹部で脱北者に売春をあっ旋している」だとか「平成の大久保清」だとか「幼児3000人を煮て食った」だとか「皇居に切断した小指を送りつけた」だとか「滞在先のホテルで、集まったファンの目の前で我が子を窓から投げ捨てようとした」とか「ネバーランドの奥で繰り広げられる、スーパースターの狂った宴」だとか、なんかすごい紹介のされ方をしていました。


 昨日、天才丸さんは「自分の価値を高めて、女子小学生にモテモテ~」とか言いながら、「モノノカ値抗生物質」を自分に投与していたんですが、どうもそれで「人間としての価値」でなく「犯罪者としての価値」を上げてしまったようです。


ヒロシ「人間の価値を、道具の力でどうこうしようなんておこがましいと思わんかね?」


 スモッグで星ひとつ見えやしない夜空を見上げながら、ヒロシが呟きました。


 ことの起こりがヒロシの不用意な行動でなければ、マルぼんも同感です。


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日記 | 19:00:00 | Trackback(0) | Comments(0)

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